先日、新聞の片隅に出ていた記事に驚いた。目黒美術館で4月9日から開催される予定だった「原爆を視る1945-1970」展が、東日本大震災とその後の原発事故を受けて中止することになったという。
美術館側は「展覧会の趣旨は震災や原発事故と関係はないが、イメージが重なる部分があり、放射能への不安が拡がる中で、被災者など影響を受けている人々の心情に配慮して中止を決めた」と言っている。
この決定に対して美術館には「今こそ開くべき展覧会だ」といった意見が多数寄せられているという。美術館としても苦渋の選択だったと思われる。
とは言っても原発と原爆は同根の存在であり、深い関係にあることを改めて銘記する必要があるのではないだろうか?
一瞬の熱線と閃光によって広島では即死者7万人余、長崎では3万5千人余、その年の12月までを入れると広島で14万人余、長崎で7万4千人余が亡くなったと言われ、ケロイドなどの外傷はもとより原爆症と言われる放射能障害に長い間苦しむ大勢の人を生み出したのが原爆である。
その記憶が次第に風化され、その酷さが伝わりにくくなってきている今、原子力の平和利用の名の下に賛否を真剣に問うことなくいつしか原発を許容し、当たり前のように電気を浪費してきた私達。その上に突然襲いかかってきたのが今回の原発事故だった。
中止になった「原爆展」は2012年に開催を目指すということだが、今回の重大な事故と無関係な展示であってはならないと思う。
企画されていた展覧会は広島と長崎への原爆投下を、美術や演劇、文学などにどのように反映され表現されたかを軸にしたものというが、原爆と原発との関わりを捉えなおして世に問いかけてほしい。 (記:伊藤 孝)
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