2月25日(土)行われた笠井瑞丈の1回限りのソロ公演「ラインを越えて」は、完全燃焼ともいえるボルテージの高い1時間となりました。
ピアノの藤田佐和子さんとの真っ向勝負。始まりこそ静謐な時間でしたが、シェーンベルグからバルトーク、バッハ、はたまたレッドツェペリンなどの曲が鳴り響く中、次第に彼の動きは、強制された調律への違和の言葉などを吐き出しながら激しさを増し、想いの丈を肉体の現時点での限界点(ライン)まで追いつめていくものへとなっていくのでした。
そして彼が「今日は2月の25日。明日は大雪になるだろう!」と何事かを予感するような言葉を吐き出すと、空からは雪が舞い始め、彼はその中で精根尽き果て倒れこむのでした。それは14年前、彼がセッションハウスで初めてにソロ・ダンス「春の雪」を踊った次の日、本当に東京は大雪となった伝説的な出来事が思い出されるシーンでもありました。
終わると満席のお客さんも夢から覚めた面持ちで熱い熱い拍手、「からだが作る未来」を強く予感させる公演となりました。
瑞丈君の言葉に呼応するように歩く不思議な登場人物となった徳永梓さん、お客さんに公演の魅力を一生懸命情宣したきた鍋島峻介君、絶妙な音作りをした上田道崇君、見事に異空間を作り上げた照明の石関美穂さんや雪を降らせるのに工夫をこらした舞台進行の相川貴君ら我がスタッフたちの努力も褒めてやってください。(記:伊藤孝)