あの日から間もなく1年になろうという昨日3月7日、セッションハウスの2Fガーデンで、渡辺一枝さんのトークの会「福島の声を聞こう!」の1回目が開かれました。
今なお解決の目途など見えてこない放射能の脅威にさらされ続けている福島の被災地。そこに通い続けて支援活動を続けている一枝さんが、現地の生の声を聞いてもらおうと企画したトークの会で、会場のギャラリーは80名ほどの聴衆でぎっしり、熱心に耳を傾けるひとときとなりました。
ゲストスピーカーとして招いたのは、津波の被害からかろうじて免れたという南相馬市のビジネスホテル「六角」ご主人の大留隆雄さんと、浪江町で牧場を営む吉沢正巳さんのお二人。
大留さんはかろうじて津波から免れ生き残った83歳のおばあさんが、希望を見いだせず自死した話など被災地の人々の苦しみを涙ながらに語り、吉沢さんは放射能の警戒区域の牧場で300頭の牛を飼い続けている想いをこんこんと語ってくださいました。
吉沢さんは自分もたっぷりと被曝しているし、牛たちも放射能まみれではあるけれども、殺処分を勧告されてもそんな酷いことは出来ないと、定期的に警戒区域の牧場に通っては牛たちに餌を与え続けているのです。
吉沢さんの乗った車の音が聞こえると、広い牧場のあちこちから駆けよってくる牛たち。放射能のため市場には出せないことは承知の上での餌やりです。吉沢さんは「これは私の意地としか言いようがない行為です」と語ります。まさに経済効率ばかりで物事の軽重を計りかねない現在、絶望的な状況下にあっても意地を貫く人間がここにはいること、それが人間としてのせめてもの「救い」であり「希望」なのかも知れません。ちなみに吉沢さんは牛たちのいる牧場にあえて「希望の牧場」と名付けているのです。
大震災の、原発事故が私達にもたらした事と次第の深さを、ずしりと突きつけてくるトークの会でありました。一枝さん、ありがとう!(記:伊藤孝)