福島の南相馬から巡回が始まった韓国の写真家・鄭周河(チョン・ジュンハ)さんの写真展が、昨日から埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館で始まりました。
この巡回展、5月7日からはセッションハウスの2Fガーデンでも開催されるものですが、昨日オープニング・トークが開かれるのに合わせて、丸木美術館に行ってきました。
丸木美術館は原爆の図などで知られる故・丸木位里・俊夫妻の作品を常設している所で、その一室に鄭さんの写真20点が展示されています。韓国でも原発のある風景を撮り続けてきた鄭さんが、被災後の福島に度々通い、目に見えない放射能に侵された被災地の姿を、独自の視点でとらえた写真の数々。日本の植民地下で詩人・李相和(イ・サンファ)が詠んだ詩の中から付けられた展覧会のタイトル「奪われた野にも春はくるか」は、いま再び私たちに重い問いを投げかけてきています。
一見しただけでは被災地とは思えない美しい景色を捉えた作品群ですが、そこには確実に放射能の影が感得されるもので、トークの中で鄭さんは「予兆」という言葉を使って、自らのコンセプトを語っていました。ゲスト・スピーカーの牧師の東海林勤さんも、宗教者の立場から在日朝鮮人や原発問題に関わってこられた体験を踏まえて、鄭さんの美しい写真から感じ取れることは何かを語り、会場からの問いかけにも丁寧に受け答えして、出席者一人ひとりが何をなすべきか考えるひとときとなりました。最後に鄭さんが「みんなもっともっと怒るべきです」と強い言葉で語っていたのが胸に突き刺さってきています。
この鄭周河さんの写真展、丸木美術館で5月5日まで開かれた後、7日からはセッションハウスに場所を移して16日まで開催します。そして初日の7日夕方7時からはオープニング・トークを開き、鄭さんを囲んで哲学者の高橋哲哉さんと作家の徐京植さんが語り合います。ふるってご参加ください。(記:伊藤孝)