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鄭周河写真展「奪われた野にも春はくるか」盛況裏に終わる

10日間にわたって2Fガーデンで開かれていた韓国の写真家・鄭周河(チョン・ジュハ)さんの展覧会が昨日16日、盛況裏に幕を閉じました。

先の日曜日、NHK・Eテレの「こころの時代」に鄭さんが登場してからというもの、来場者が急増し連日多くの方が訪れ、一つ一つの作品に静かに向き合ていました。
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写真展のタイトルになった「奪われた野にも春は来るか」は、日本の植民地下で苦しむ人々の気持ちを慟哭するように読まれた李相和(イ・サンファ)の詩によるものでしたが、その言葉に魅かれて来場した在日朝鮮人の方もいました。政治家たちの傍若無人な言説と行動が多くの人々を傷つけている今、この日本の過酷な収奪下にあった朝鮮の人々の歴史と、東北の被災地の人々の想いが共振し始めているのではないのか、鄭さんの写真と対峙しながらその問いを投げかける10日間でした。写真展を閉じるにあたって、長いものですけれど今回の巡回展の提案者・作家の徐京植(ソ・キョンシク)さんによる訳詩全篇を紹介しておこうと思います。
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                    書:齋藤千晴

    いまは他人(ひと)の土地~奪われた野にも春は来るか

私はいま全身に陽ざしを浴びながら/青い空 緑の野の交わるとことを目指して/髪の分け目のような畔を 夢の中を行くように ひたすら歩く

唇を閉ざした空よ 野よ/私ひとりで来たような気がしないが/おまえが誘ったのか 誰が呼んだのか もどかしい 言っておくれ

風は私の耳元にささやき/しばしも立ち止まらせまいと裾をはためかし/雲雀は垣根越しの少女のように 雲に隠れて楽しげにさえずる

実り豊かに波打つ麦畑四/夕べ夜半過ぎに降ったやさしい雨で/おまえいは麻の束のような美しい髪を洗ったのだね 私の頭まで軽くなった

ひとりでも 足どり軽く行こう/乾いた田を抱いてめぐる小川は/乳飲み子をあやす歌をうたい ひとり肩を踊らせて流れてゆく

蝶々よ 燕よ せかさないで/鶏頭や昼顔の花にも挨拶をしなければ/ヒマの髪油を塗った人が草取りをした あの畑も見てみたい

私の手に鍬を握らせておくれ/豊かな乳房のような 柔らかなこの土地を/くるぶしが痛くなるほど踏み 心地よい汗を流してみたいのだ

川辺に遊ぶ子どものように/休みなく駆けまわる私の魂よ/なにを求め どこへ行くのか おかしいじゃないか 答えてみろ

私はからだ中 草いきれに包まれ/緑の笑い 緑の悲しみの入り混じる中を/足を引き引き 一日 歩く まるで春の精に憑かれたようだ

しかし、いま野を奪われ 春さえも奪われようとしているのだ
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鄭周河さんの写真展、この後は沖縄に巡回することが決まり、7月24日から8月26日までの間開催されることになっています。また、鄭さんが出演したNHK・Eテレの「こころの時代」は明日の土曜日午後1時から再放送されます。まだご覧になっていない方は、ぜひチャンネルを合わせてみてください。(記:伊藤孝)
by sh_offstage | 2013-05-17 03:20 | Comments(0)
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