昨能16日の金曜日、いま開催中の写真展「消されゆくチベット」の会場で、渡辺一枝さんのトークの会が開かれ、多くの方が耳傾けるひとときとなりました。
鉄道が通り、近年急速な中国化でチベット人の民族的アイデンティティが危機に立たされていますが、その変化をつぶさに見てきた渡辺一枝さんのお話は、数少ない報道からは伝わってこないものばかりでした。チベット人には移動の自由がなくなり、巡礼に行くにも当局の厳しい審査に基づく通行許可を得なければならなくなったとのこと。いたる所に監視カメラがあり、自由の民チベット人の生活はたいへん息苦しいものになってきているようです。かつては牧畜をする人と農作業をする人との間で物々交換していたのに、今では現金がないと食糧も手に入りにくくなっているというのです。 上の写真は展示されているラサに巡礼にきてポタラ宇宮殿の前で撮った家族の写真ですが、こうした光景はもう今では見られなくなったとのこと。 1988年以来チベットに行き続けている一枝さんも、非開放地区が拡がって2008年以降は個人旅行が出来なくなり、ジャーナリスト達も取材がたいへん難しくなっているといいます。最近チベットに関する報道やドキュメンタリー番組が目につきにくくなった訳も、そこに起因しているようです。
しかし、一枝さんは暗い状況下にあってもチベット人としての誇りを持ち続けようと、チベット語の学習に力を入れたり、ラップで抵抗の意志をこめた歌をひろめたり、頑張る人達もいるとのこと。一枝さんもチベットの文化や言葉を子供たちに伝えていく若者達が勉強できる機会を持てるための教育資金を集める支援活動を始めていらっしゃいます。
展覧会場の入り口に置かれた一枝さんお手製の羊の子を抱いたチベット人形が、皆様のお出でをお待ちしています。この写真展は19日(月)まで開かれています。チベットで今起きていることを、そして自分たちが今世界について何を考えるべきかを知るためにも、ぜひご覧になさってください。(記:伊藤孝)