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先頃、我が故郷広島を久々に訪ね、お神楽の公演を見て、その構成力や迫力に民俗芸能の底深さに圧倒されてきました。
私が見たのは広島県民文化センターの大ホールで毎週水曜日に開かれている定期公演。この日に出演していたのは、広島市の山間の地区からやって来た「宮之木神楽団」で、演じられたのは『岩見重太郎』と『八岐大蛇(やまたのおろち)』の2演目。
広島県の各地には島根県とともに数多くの神楽団があって、競うように一年を通して活動しているとのこと。「月一の舞い」という毎月開かれる広島・島根に伝わる石見系神楽の交流公演に参加している神楽団は、貰ったパンフレットには何と77チームが名を連ねていました。中には高校生のクラブも入っているから驚きです。それも古くから伝わる物語をいかにして見る人親しんでもらえるか、各神楽団が創意工夫を重ねて競い合っているのですから、見応えあるものが次々産まれてくるのも頷けるところです。
神楽団には若者も大勢参加していますが、ほとんどの人は働きながら週に2,3日仕事を終えた後に集まって稽古に励んで技を磨いているとのこと。働きながらダンスに取り組んでいる我らのコンテンポラリーのダンサー達も負けてはいられませんね。
中国山地の町や村もグローバリズムと画一化の暴力が吹き荒れる中で、ご多分に漏れず過疎化にさらされていますが、若い人も参加するこうした民俗芸能がコミュニティを支えるものとして機能していることは、とても大切なことのように思えます。先頃NHKテレビで「原発事故と民俗芸能」という番組で、福島県に800近くあった民俗芸能やお祭りの多くが津波と原発事故で存続が難しくなった中、崩壊した集落の人と人のつながりを取り戻そうと、天狗舞や田植え踊りの復活に必死に取り組む人達の姿が紹介されていました。広島の神楽ともども、私達が民俗芸能を支える人達から学びとることは沢山あるように思えます。(記:伊藤孝)
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