日曜日と月曜日の祭日、マドモアゼル・シネマの新作「わたしの東京物語」が3回にわたって上演され、各回とも大勢のお客さんで祝祭的な空気の流れる公演となりました。

今回はレギュラーメンバー5人に加えて総勢15人のダンサーが出演。世界に類のない巨大都市東京で暮らし、働き、学んでいる齢の差もまちまちのダンサー達一人ひとりの東京への想いやイメージを基に、構築していったダンス物語です。いつかどこかで耳にしたことがあるであろう懐かしい歌が響いてくる中で、群舞やトリオやデュエットなどさまざまなダンスシーンが走馬灯のように次から次へと展開していきました。


毒も薬もあらゆるものを飲み込んだメガロポリス東京の地域性とは何かと一言では定義しにくいけれど、今この地に生きる者としてダンスを通して現代の“郷土芸能”を創り出そうというのが振付・伊藤直子が志向するものでもありました。今回はその“郷土芸能”の予感をお伝えしたく思い、多くの舞台写真を掲載しますので、ご覧になれなかった皆さんにも楽しんでいただけたらと願っています。

リハーサルの時の写真では伏せていましたけれど、いつもマドモアゼル・シネマの衣裳を作って下さる原田松野さんは今回も、意表を突く独創的な衣装をデザインで、一斉に花が開くようにダンサーにエネルギーを吹き込むものでした。


振付の伊藤直子は当日プログラムに書いている言葉です。
「東京という巨大都市はうごめく有機体のようで、物語は混沌の中に埋もれています。日々を安穏に暮らすには情報の多すぎるこの街を居に、ダンスという創作に生きる女性達のドキュメントのような作品を目指しました。」







ラストシーンには、特別仕立ての装置で天井から吊るした普段着の衣裳を相手に、ダンサー全員が「ハッピーバースデイ」を合唱しながらの大団円で賑やかに幕を閉じたのでした。

マドモアゼル・シネマのは、昨年アビニョン演劇祭で「日出ずる国から来たダンス」と評判になった作品『赤い花・白い花』で8月に韓国ソウルのフェスティバルに参加、10月には東京、和歌山、札幌へと巡回公演を行います。マドモアゼル・シネマの“旅するダンス”はまだまだ続いていくのです。(記:伊藤孝)