昨日11月11日の水曜日、2Fガーデンで17回目となる渡辺一枝トークの会「福島の声を聞こう!」が開かれました。
今回のゲスト・スピーカーは南相馬市の市会議員の田中京子さん。津波と原発事故に襲われた町で、被災以前から産業廃棄物処理場建設反対運動など、地元の環境問題に取り組んできた方で、被災後は市議として住宅問題や放射能の除染問題など、行政と住民の間をつないで解決の道を模索し続けています。今なお被災時のお話になると声を詰まらせる田中さんでしたが、被災者の現在の姿をさまざまな角度から伝えて下さったのでした。

田中さんや南相馬に通い続けている一枝さんのお話から、とりわけ印象に残ったのは、被災者の間に広がっている亀裂の問題でした。被災後4年有余経って元の地への帰還問題や住宅建設問題、補償問題などで、ばらばらになった住民の間に新たな亀裂が生じてきていて、複雑化の様相を呈してきているといいます。歳月の経過で仮設住宅の傷みも生じているのに、そこには新たに人と人の繋がりが出来ていて、仮設を出たくないという人も出てきているとのこと。従来のコミュニティが壊された上に、移り住んだ仮設で出来てきたコミュニティがまた壊されかねないというのです。そうした移転問題の複雑さを伺っていると、今更ながら原発事故がもたらした罪深さを痛感させられました。

今は安保法制の強硬採決などもあって人々の関心事が拡散しているからでしょうか、昨日の参加者は決して多くはなかったのですが、被災地の人々の中に亀裂の拡がっていることに心を痛め、多くの人が手を上げて熱心に質問したり意見を語る会となりました。

会場には福島のお婆さんたちが作った手芸品や手書きカルタなども展示され、来場者の注目を集めていました。

このトークの会、記憶が拡散しがちな現在ですが、来年ももちろん継続開催していきます。
開催日は決まり次第セッションハウスのHPなどで発表しますので、皆様の参加をお待ちしています。(記:伊藤孝)