先週の5月27日の土曜日、渡辺一枝トークの会「福島の声を聞こう!」の23回目が開かれ、ゲストスピーカーの長谷川健一さんから原発被災地の生々しい現状報告がなされました。

長谷川さんは飯館村で酪農を営んでいましたが、全村避難指示地域となったため、泣く泣く飼育していた牛たちを処分し、今は伊達市の仮設住宅に住みながら、原発被害を糾弾し村民救済のための活動をしている方です。

飯館村は3月末に一部地域を除いて避難指示が解除されましたが、長谷川さんは到底村はまだ暮らせる状態にほど遠いと、映像を見せながら村の現状をつぶさに語って下さいました。

行政が設けた放射能の線量計のメモリーは低めに設定されていて長谷川さんたちの計量とは大きな隔たりがあること、村の農地には230万個という汚染土壌を入れたフレコンバックがそこここに山積みになっていることなどから、わずかにお年寄りが帰ってきただけで到底農を営みながら暮らせる状態ではないと言います。

その一方で補助金から立派な集会場の建設や陸上競技場などの整備が進み、高齢者ばかりになった村にこんなものが必要なのかと疑うものが出来ているといいます。「こんなことは“復興”でも何でもない」語気を強めて語る長谷川さんです。かつては美しい村作りの同志であったのに、今では帰村を進める立場になった村長とは仲たがいし、村民の中の人間関係にも大きな亀裂が生じているというのですから、長谷川さんの悩みは深まるばかりのようでした。

長谷川さんは先頃訪れたチェルノブイリの報告もして下さいましたが、決して豊かではない国ではないけれど、そこでは厳重な放射能チェックが行われていて、子供たちの健康管理にはきめ細かな施策をしているとのことで、被害を低く見積もって事態を軽く見せようという日本の貧しい対応の仕方を改めて強く感じてきたとのことでした。

長谷川さんが最後に「明るい未来などと語ることは出来ません。いま起きていることを直視して、それにどう立ち向かうか考えることが大切なのです。」と語っておられたことが、強く響いています。
この「福島の声を聞こう!」、次回は8月5日(土)に、いわき市から神奈川県に母子避難している松本徳子さんにお出でいただく予定にしています。長谷川さんのように現状にあきらめることなく、己が出来ることをやり続けていくこと、それが肝要のことと改めて心しているところです。(記:伊藤孝)