2階ギャラリー【ガーデン】で昨日から当画廊では2年ぶりとなる高專寺赫さんの個展が始まっています。高專寺さんは1946年生まれのベテラン・アーティストで、あくことなく表現することの意味を問い続けている方です。以前には立体作品も制作していましたが、昨今は思い思いのサイズで作ったカンバスにアクリルを主体に色づけし、そのマチエールにこだわった抽象世界の表出に力を注いでいます。そして今、生まれた土地(中国山地・広島)の風景が蘇り、作品にその影が投映されるようになったように思うと語っています。あくまで私見ですが、平面の上で時には盛り上がるように塗られて色彩たちが織り成す世界には、一枚一枚それぞれのドラマがあり“ざわめき”のようなものが伝わってきます。
私が最近再読した作家・堀田善衛さんが著書の中で描き出した中世(鎌倉期)の動乱の時代に生きた鴨長明や藤原定家たちの中の“ゆらめき”や時代の“ざわめき”の投影が、そう思わせられる因になっているのかも知れません。作品一つ一つから感じるドラマは、ご覧になる人それぞれでしょう。この展覧会は28日の日曜日まで開いています。ぜひお立ちよりになって、じっくりご観覧下さい。お待ちしています。(記:伊藤孝)