先の24日土曜日と25日日曜日、今年の「ダンスブリッジ・インターナショナル」の最後を飾って伊藤直子版が行われ、「ダンスには人と人を繋げる力がある」とする笠井瑞丈さんの総合演出でそれぞれの作品にそれぞれのダンサーが出演し、作品間にブリッジを架けるという初の試みで、ボルテージ満開の舞台となりました。
まず先陣をきったのはマドモアゼル・シネマの作品『海を渡る』。およそ100年前に、写真花嫁としてアメリカに渡った振付・演出の伊藤直子の祖母たちの物語を、今も世界各地に起きている移民問題を意識しながらダンスシアターの手法を駆使して蘇らせたものです。
昨年12月に上演した『女は、旅である』をリメイクしたものですが、今回はマドの7名のレギュラー・メンバーに、アメリカで待ち受ける男たちとして笠井瑞丈と奥山ばらばが参加して、新たな展開を見せてくれました。




続いて、笠井・奥山作品との間には、台湾からやってきたB.DANCEの2人の若いダンサーが、当地の伝統的な祭事にのっとって創られた作品『Floating Flowers』が上演され、10分足らずのいう短い時間でしたけれど、見事なテクニックでパワフルなダンスを見せてくれ、プログラムの流れに強烈なインパクトを与えるものとなりました。
振付:Po-Cheng Tsai出演:Yi-Ting Tsai, Li-An Lo
私たちの人生の旅はまるで空中にゆらゆらと揺れ動く提灯のようなもの
そして最後を飾ったのは、笠井瑞丈と奥山ばらばによる『薔薇の秘密』。心に秘めた哀しい愛の思い出を軸にして、さまざまなダンス・シーンが出現。今度は随所にマドのダンサーが登場して、2人のダンスを盛り上げていきました。

「どんな人にも人に言えない秘密がある。どんな美しいものにも醜い一面がある。どんな命にも限られた時間と死がある。」
また作品の中ほどでは、「ダンスブリッジ」ならではの交流として、台湾の2人も加わってブレイクする間奏曲のような場面も出現したのでした。


「人と人 言葉と言葉 空気と空気 それが交じり合う交流プロジェクト」を目指した総合演出の笠井瑞丈が願ったものは、見事な大輪の花を咲かせてくれたように思います。
日曜日のそれぞれの公演の後にはアフタートークが行われ、「ダンス・ブリッジ」がダンサー間のみならず観客との間に架け橋を作っていくものだということを確認しあう機会ともなりました。
14時から公演後には「劇場研究班による作品分析」と題して若手ダンス研究者の中野優子と木場裕紀の2君がダンサーたちへのアンケートを基にダンサー達に問いかけるアフタートークが行われました。
18時からの公演後には、コンドルズの近藤良平と石渕聡の両氏とセッションハウスのプログラム・ディレクターでもある伊藤直子が登場し、「ダンスの楽しい観方」と題して、当日の作品評などをまじえて語り合うひとときとなりました。 この「ダンスブリッジ」は来年秋へとバトンタッチされ、更に内容に工夫をこらしてダンスをツールにさまざまな架け橋を創り続けてていくことを予定しています。今後の展開にご注目下さい。(記:伊藤孝)
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