本格的な猛暑の到来を前にしたこの頃ですが、それにも負けじとマドモアゼル・シネマは振付の伊藤直子の下、9月の新作公演に向けて振付作業に熱が入ってきました。
今回は2人の女優を迎えて、これまでとは一味も二味を異なるダンス・シアターで、作品名は題して「彼女の椅子(仮)」。遠くセルビアから日本にやってきた高橋ブランカさんとマドとは度々共演してきているドイツから駆けつけた村雲敦子さんが参加し、国境を越え移動する女性たちの「生きていく場=椅子とは何か」を問いかけて作品です。そうした意味からも「(仮)」というカッコつきの言葉は決して仮のタイトルではありません。

それぞれ暮らしの習慣などが微妙に違う異国に嫁いで暮らす2人の女性が語る言葉に、それを迎えた7人の女性たちがダンスで応えていきます。
日本の私たちとの架け橋を作ったサラエボ出身の歌姫ヤドランカの歌声などが流れる中、静かに綴られていくダンス物語です。リハーサルにはロシアのウラジオストックからやって来たフォトグラファーのマルガリータさんも来場し国際的雰囲気の中、興味深そうにシャッターをきっていました。
流浪の生涯の中で「過度にくつろぐようなことの方がよいのだ」とパレスチナ出身の比較文学研究者エドワード・サイードが語ったように、現代に生きる私たち一人一人の居場所は決して確かなものではありません。そうしたことに思いを致しながら皆様にもぜひご覧いただきたい作品です。公演は9月7日(土)19時、8日(日)14時、18時の3回です。皆様のお越しをお待ちしています。
(記:伊藤孝)